このお話しは弊社の「ありがとう納棺」でお客様との旅立ちのお手伝いをしている社員 伊藤の納棺日記より抜粋しました。
今日は、私が故人さまの旅支度をお手伝いさせていただく時に出会ったご家族のお話しをさせて頂こうと思っています。
それは、故人さまを中心としたご遺族様とのあたたかなひとときでした。
。お葬式の前には、故人様をお棺へと納める
『納棺の儀』
という儀式があります。
映画の『おくりびと』をご覧になった方は、主人公の元木雅弘さんのイメージがあるのかもしれません。
お布団に眠っている故人様をお棺に納める時は、お亡くなりになられた時の哀しみを掘り起こすように再び悲しみに見舞われることが多いと感じます。
それは、日常の生活には目にしないお棺という小さな場所への移動という少し窮屈だと思われるようなスペースに身体を映していただかなくてはならないのもその要因の一つと言えるのかもしれません。
お顔、お体の手当てをして、白装束にお着替えをします。その支度を整える際は、なるべくご遺族の皆様と一緒に整えていくよう声かけもさせていただくようにしています。
その場には、故人様と皆様の、たった一つの絆の物語があります。
ある日の「ありがとう納棺」でのお話しです。
男性の故人様でした。慣れ親しんだ自宅での時間を大切にしたいと皆さんで自宅看護を行いました。皆さんの努力の上、最後までの時をご自宅で過ごす事ができました。
最期は、3人のお子様と、5人のお孫様に見守られて息を引き取られたそうです。
故人様、お元気だった頃はずっとお仕事一筋で、ご趣味も特になかったそうです。
無趣味な方ではありましたが、お子様方と一緒に休みの日には公園などに行って遊んだり、お孫様を連れてどこかに遊びに行く、良き父、良き祖父であられたようです。
ご納棺の際、私は必ず
『皆様、何かお棺に入れて差し上げたいものなどありますか』
とお声をかけるようにしています。しかし、遊んでもらった思い出はたくさんあるもののいざ何かをと思うと、特定の何かは思いつかないといったご様子でした。
その時ふと、故人様のお顔お近く枕元に、おタバコが一箱置いてあったことに気が付きました。
「もしかしてタバコ飲みの方でいらっしゃいますか?」
私がそう尋ねると、
故人様の娘様から
『その通りです』
言うお声が帰ってきました
そのお言葉でその場は一気に故人さまの思い出に花が咲き始めました。
元々お元気だった頃は日に2箱は吸っていらしたそうです。
晩年、お体を崩されてからはタバコを吸いたくても咳き込んでしまい、皆からも止めるようにと言われ続けていたそうなのです。
そんなにお好きでいらっしゃるのであれば、ぜひあの世へ旅立たれる時にも持って行っていただきたい。そう思い、おタバコを旅装束の胸元へ入れていただくように、提案をさせていただきました。
そして、火種がなければタバコを吸うことができないので、葬儀会館に常備してあるマッチを一箱、合わせて胸元へ入れていただきました。
『これからは好きなだけ吸えるね、よかったね』
懐に入れてくださった娘様が、最後に故人様の胸元を撫でておられたのがとても印象的でした。
思い合うご家族の関係の一端に触れることのできた、得難い経験となりました。
かとう葬儀では、『結葬』皆様を結び合わせる、新たなお葬儀のあり方を模索・提案しております。
思い出に寄り添いながら皆様と一緒に最後のお時間までの過ごし方、してさしあげたいことなど、お手伝いさせていただければ幸いです。